2016.09.11

海外のSkype会議 vs 日本のSkype会議 - Skype meeting, overseas vs domestic -

koshirorecNYとLAのスタジオと繋いだ海外収録は始めてからもう7年くらいになります。音声もコンソールOutから直接出るので、非常に綺麗な音質でモニタリング&ディレクションすることが可能です。

先日も収録をしていて思いましたが、海外とのSkype会議は、気持ちがつながって、バーチャルコニュニケーションであることがそれほど問題にならないのに、どうして国内(日本語)のSkype会議は、何か距離を感じてしまうのか・・と考えました。そのように感じる方は他にもいらっしゃるのではないでしょうか。

ふと気付いたのが、英語は実に気持ちをダイレクトに表現しやすい言語だな、ということです。ファーストネームで呼び合う時の微妙な声のテンション、言った言葉や行ったアクションに対して求められる気持ちの表現(Cool! Great! Wonderful...)、常に"I"が主語に来るものの言い方(自分の気持ちや考えを表現するのが当たりまえ)など。逆に言えば、「空気を読まないといけない」非言語コミュニケーションの割合が少ないということです。

それに対して、日本のSkype会議はどうしても「要件の伝達」に終始してしまいます。プライベートでビデオチャットする分には何でもありでしょうが、こと仕事となると、ビデオ会議は理路整然とプレゼンテーションされた意見だけが伝達され、言葉にされていないものは何も伝わりません。特に「周りの反応はどうかな、自分の意見も言おうかな」みたいな空気感、仕草、温度みたいなものは、全くと言っていいほど伝わらないです。結局「強い者が勝つ」「正論だけが通る」という、メール伝達と対して次元の変わらないコミュニケーションになってしまうことが多い気がします。隠れた気持ちを拾い上げることこそ会議の主眼とするならば、日本ではやっぱり多少お金がかかっても「会いに行く」必要があるかもしれません。

それに加えて、英語に加えて母音が中心で、子音の少ない日本の言語は、どこで感情伝達をしているかというと、「母音の響き」だと思うのです。体に響く部分ですね。英語に多く含まれる子音は実は結構感情を乗せることができます。優しい感情も、怒りの感情も、喜びの感情も、例えば"Thank You" "So Happy"など、子音で表現できることが結構あります。そして、子音の周波数帯域は、思ったほど高くありません。たかだか5KHz-8KHzの間くらいです。音の悪いアナログ電話や圧縮されたSkypeでも伝達できるレベルです。

それに対して、母音の響きは、周波数帯域には見えてこない、「音波の違い」がそもそもあります。体を響かせて伝わる「振動」が、その人の体や骨を伝って、喜びや怒り、もしかしたら意地悪という見えない部分も含めて、何となく感じ取る部分なんだと思います。これを周波数であえて考えるなら、音波より遥かに高い帯域になるでしょう。

その部分は、音情報でないわけですから、デジタルになると著しく劣化します。映像にも見えません。だから、Skype会議で気持ちが全然伝わらない、ということになるのではないでしょうか。

 

日本人の繊細さは、そういうところにも現れます。虫の声に風情を感じるのはアジア人の一部だけだとも言われます。日本で豊かな食文化が発展したのも、そのあたりもあるかもしれません。

だからこそ、日本人は、人を気遣うことができるし、ホスピタリティを自然に持つことができるし、逆に一般的に欧米人には理解されないような「不登校」「ニート」といったような悩みが存在したりします。この日本人の繊細な感性を、デジタル化・情報化・グローバル化・効率化の世の中の流れにあって、決して「ダメなもの」と自分が思い込んでしまうことのないようにしたいものです。

 


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