2015.05.09

海外収録を成功させるコツ - tips for successful overseas recording-

recording_harp

ここ数年でますますニーズの高まっている、海外ミュージシャンの収録。

以前はその筋の専門の方がコーディネイト含め全て手配されるのが一般的でしたが、最近はSkypeを使って、制作者が自分でレコーディングをコーディネイトするケースも随分増えていると思います。

私の経験から、少しでも役に立ちそうなコツをお伝えできればと思います。

ポイントは以下の4つ。

1)人間関係第一

2)信頼して任せる

3)ほめる、あら探ししない

4)即金払い

 

1)人間関係第一

特に大事なのが、現地のエンジニア兼プロデューサー。どれだけ良い仕事をしてくれる方をちゃんとパートナーに持てるか、これが全てといっても言い過ぎではありません。FBで知り合って、Skypeでミーティングして、レコーディングに突入というケースは最近一般的だと思いますが、お互いの人間性を良く知り合い、仕事と全く関係ない話や技術的なレベル等、しっかり事前に(出来ればじかに会って)関係を築いておく必要があります。少なくとも私は海外収録において、リアルに会って関係を築いていないエンジニア兼プロデューサーと仕事をしたことは一度もありません。

2)信頼して任せる

そのエンジニア兼プロデューサーと関係を築く事が出来たら、キャスティングからスタジオ手配まで、私の場合は全て信頼して任せています。特に玉石混合のアメリカは日本以上にコネと横のつながりがものをいう世界。「何の仕事」も大事ですが、大バジェットの仕事はむしろ限られていて、小バジェットの場合は特に「誰の仕事」ということが演奏家にとって大きな意味とモチベーションを生みます。一般的に、素晴らしい人間性のプロデューサーの周りには人間的に素晴らしいプレイヤーが沢山います。こちらの必要を伝えるのはもちろんですが、日本的に重箱の隅をつつくようなディレクションは、一番モチベーションを落とします。思い切って信頼して任せられるか、これがキモです。

そのためには事前準備の必要性はいうまでもありません。意外と見落としがちなのが、録音ブースの状況。日本では考えられないような劣悪な環境であることは良くあります。特に「反射」(壁、譜面台、部屋の形や距離)の問題はシビアに見ておかなければ、音声収録の場合はネックになります。予算のない仕事ほど、ここをちゃんとつぶしておかなければいけません。

3)ほめる、あら探ししない

いざ録音がはじまったら、とにかく「どれだけ演奏家をほめられるか」。WonderfulとSound greatばかり連発して録音が終了できたら最高です。日本のスタジオプレイヤーのように四角四面に指示を受けて、それを克服すべく努力する、という思考の人は私の経験上ひとりもいません。もちろん、熟練のプレイヤーはそれをやってくれますが、明らかにテンションが下がります。

基本の発想が「いかに自分がオリジナルであるか」ということが思考のベースにある人たちに、こちらの思う事を押し付ける事、それ自体が間違っていることを認識する必要があります。

むしろ、自分が出した素材をどう料理するか、それを楽しむくらいの気持ちが必要です。その時にリアルタイムで、「あ、こういうやり方もあるのか」「これはこういう風に使えるな」等、頭の中でアレンジを再構築するくらいの柔軟性が制作者に必要です。

どうしても気になる所を直してもらうのであれば、しばらく調子が出て来てから、「素晴らしい!ところで、ここがこうなると、さらにかっこいいんだけど」というような言い方をすれば、すんなり受け入れてくれます。このタイミングをミスると、雰囲気が最悪になります。

特にSkype収録では、現地のエンジニアに言う事はそのまま演奏家にも伝わってしまう事があります。言葉の使い方に気をつけないと、演奏家の方は、自分が否定されているような気分になってしまいます。これは絶対に避けなければいけません。

4)即金払い

なぜこれが大事かというと、特にアメリカはチェック(小切手)支払が一般的なので、ユニオンの雇われプレイヤーでない限り、演奏が終わったらその場で支払を受けて帰るケースが普通です。日本は演奏家に対しても翌月末銀行振込、みたいなのが割とありますが、これは海外ミュージシャンが一番嫌がるスタイルです。

理想は、エンジニア兼プロデューサーにその支払も一括して任せてしまう事。それが出来なければ、Paypalですぐに払ってしまうのが良いと思います。

契約に関しても、できれば権利譲渡や肖像利用に関しても、まとめてそのエンジニア兼プロデューサーに一括して進められればとても楽です。

※アメリカの作曲家の知人がよいアドバイスをFBに下さったので追記しておきます。アメリカやヨーロッパでは、ある程度の規模の収録になるとContractor(Fixer)という立場の方が契約を取りまとめます。

ヨーロッパのオケ取りでは例えば
http://www.dynamedion.com/orchestra/

信頼できる知り合いがあるといいですね。

 

-------English--------

Here's 4 tips for successful overseas recording, from my experience:

1) human relationship, especially with engineer & producer

Even you use skype & facebook, real human relationship and getting to know the personality of the engneer & producer is crucial. As he would be the key person of the whole quality, including musicians who will come to the session.

2) trust & give resonsibility, do not pick up tiny things.

Once you establish the relationship to enginner & producer, have him call up performers. You don't want to try to pick up tiny details and say at the recording, instead, technical issues such as room condition, reflection, gears are to be solved prior to the session.

3) always speak well of the performance, then request

We need to "value" the performer's work first. In skype recording, both performers & engineers may be listening to your talkback. You really need to be careful to what you say so that you don't make performers feel not qualified.

4) pay cash on the recording

This is part of creating trust. In Japan many people uses bank transfer but in US check is more popular. Japanese producers need to aware of that.
 

 

 

 

 

 

 

 

 


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