2023.08.11

アンビヴァレンスと感性

来月9/17コンサート予定の「ほっこりハウス」

久しぶりに宝塚に伺うのを楽しみにしています。

 

さて、私の保育園でも子どもの発達についての相談や検討を日常のように行っていますが、私たちが肝に銘じておかなければいけないのが「レッテルを貼ってしまう」こと。

特に発達に関する知識が増えてくればくるほど、その中で子どもの状態から子どもの抱える問題を判断し、対処法に結びつけようとしてしまいがちです。

 

今回非常に参考になったのは精神医学臨床家の小林隆児さんが書かれた「臨床家の感性を磨く」という本。心理学出身の私としても、「関係を見る」というところの具体的な方法について、とても興味がありました。

その中で著者は「アンビヴァレンス」(言葉にできない相反する「もやもや」感)に着目しています。そのアンビヴァレンスを専門用語や知識などで枠にはめようとしてしまうことの警鐘を鳴らしています。全く同感です。

子どもを見る時には必ず親がセットです。さらにはその家族環境、親自身の育った環境なども大きな影響があります。その関わりの一連を洞察することで、子どもの、あるいは親のアンビヴァレンスがどこから来ているのか、を対話を通じて、丁寧に読み解いていくその「感性」は、著者が「持っている人はごく少数」と書いてある通り、本当にそうかもしれません。

保育園はその家族や家庭環境までかなり丁寧にフォローしているので、そのようなアプローチができるのですが、実際問題として、医療機関や発達支援機関に1回相談に行っただけでは、関係性の読み取りは非常に難しいと思います。そこで「要支援」のレッテルだけもらってきて、親子関係や子育ての喜びが崩れてしまうのは最も起こってほしくないことです。

親御さん自身が、ご自身の生育環境の中で感じてきた様々なアンビヴァレンスと、それに蓋をするために行ってきた様々な対処(例えば、思っていることを口に出すと孤立してしまったり、高圧的な親だったりしたので、思っていることは言わないようにした、など)、それ自体が、知らず知らずの間に子どもとの関係性に影響を及ぼしていることが多々ある、と私も日常から感じています。

その「どうにもできない気持ち」に蓋をしてきた自分に目を向けるのはとても辛いことですが、だれか一人でもそこに共感して受け止めてくれれば、その先に進める部分があります。また赦せない過去については、自分の力でも、誰かの傾聴によっても、どうにも乗り越えられないものもあります。

解決は簡単ではないですが、この問題を一人で、もしくはわずか一人の援助者との共依存(チェーン)によって乗り越えることは非常に難しいと感じています。援助者も担いきれず、支えられる必要があるからです。

ひかりキッズにはそのようなサポートを行なっていくためのチームがあります。問題を一人に背負わせないよう、様々なミーティングや、思ったことがすぐに言える環境を作ることに力を投じています。また、地域の民生委員をはじめとした様々な機関・行政・保健師・専門家とも連携をとりながら、チームで対応を行っています。小さな園ですが「ひとつの大きな家族」を大事なビジョンとして、安心して愛される場所でそのようなことを時間をかけて紐解いていくことができればと願っています。

 

また、一見関係ないようですが、音楽はこの問題について大きな力を発揮するように感じています。「感性」のactivationには、言葉という論理的思考をあえて経由させないこともひとつのポイントかと思います。思ったことが言えない人にとっては、音楽という表現手段は、とても良いメディアだと感じています。

音楽を聴いて、訳もなく涙が出てきた・・・私は「霊的感受性(Spiritual Sensitivity」という表現が一番的を得ているように感じていますが、心のさらに奥にある、魂・霊の部分に響くとき、それはもはや「私」という理性を超えて感性のactivationがなされているのではないかと感じます。

そのときに、赦せなかった過去・自分に対する癒しが起こってくることは、十分考えられることだと思います。論理的に数値化できるものでもないですが、それによってたった一人でも、ある時期でも、救われることがあるのなら、大事な働きだと感じています。少なくとも、そのためにだれかがボロボロになってケアを続けなければならない状況が少しでも改善するのであれば、それは大きな経済効果があると言っても過言ではないと思います。

ただ、そのためには、演奏家自身が自分と向き合い、霊的に良き働きができる備えができているか、すなわち自己表現・人気商売の罠から完全に抜け出ることができているかどうか、それが問われます。

音の創造・演奏・エンジニアリング・伝達の4要素が絡み合い、この音による関係性の癒しは起こってくると考えています。詳しくは日比野音療研究所のHPに記載をしています。

 

 

 

 

 

 

 

 


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