2015.05.20

リアルとバーチャル - Real & Virtual -

wineglass

ワイングラスと薔薇。

もう少しすると薔薇が美しい季節になりますね。

ところで、リアルとバーチャルということを考えてみたいと思います。

例えば、ブドウはリアルです。夏の季節になれば、とても甘くて美味しいブドウが食べられます。

一方で、ワインやブドウジュースは、バーチャル。本物のブドウではありませんが、保存がきき、いつでも美味しくブドウ味を頂く事が出来ます。

良いブドウを作る、という点では、リアルなブドウであろうが、ワインであろうが共通する点は多いと思います。病虫害から守るとか、土地を整えるとか、日照条件を揃えるとか、そういったことです。

ところが、食べる為のブドウををより美味しく作ることと、より良いワインを製造することは、ずいぶんと異なるプロセスが必要ではないでしょうか。

例えば、食べる為のブドウは、収穫タイミングや、素早く届ける流通経路、ブドウのサイズ、糖度も大きな問題です。

一方でワインは、流通経路の素早さや粒のサイズそのものよりも、いかにワインとして美味しく完成されたものに出来るか、というゴールを見据えた、違った角度からの工夫が必要です。ブドウとしては酸っぱくても、その酸味がもしかしたらある特定の料理にはちょうど良いかも分かりません。

 

どうしてこういう話をするかというと、私達が今取り組んでいる「天上の音楽」と「凛舟」は、ちょうどこのブドウとワインみたいなものだと思うからです。

天上の音楽」コンサートは、始めてみて分かりましたが、ある程度体の具合が良い方、時間の都合が付く方しか体験して頂く事が出来ません。もちろんリアルだから故の、最高の会場、最高の音響、映像、練られた演出から「生きていく希望」を感じて頂けるように、最大限の努力をします。舞台袖は、舞台監督からの映像と演奏家へのキュー出しで、秒単位で事が進んでいくので、ドキドキハラハラ。まさに「タイミング命」です。この間合いがだらけてしまったり、音量が大きすぎたり小さすぎたりしても、伝えるべきものが伝わりにくくなってしまいます。

ところが、「凛舟」の方は、バーチャルです。「生演奏の音量は必要ない、またコンサート会場まで行く事は出来ないが、いつも傍にあって「希望」を感じさせてくれるような音楽が流れていたら・・」そんなものを目指しています。

例えば、在宅で寝たきりの方。ご本人はもちろん、ご家族も、なかなかその場を離れるわけにはいかないのが現実かと思います。そういう方に、いつも寄り添うような音楽や鳥のさえずりなどが流れていて、かつ生演奏のようにリクエストにも応えてくれる、そんな使い方をイメージして作っています。

録音の時から、いかにその出口をイメージして、音を作れるか。それがキモです。楽曲の選定、アレンジの仕方、マイクの置き方、ミックスの仕方、どの過程をとっても「この音は本当に心の安らぎに通じるか」「刺激が強すぎないか」「凛舟の特性とマッチするか」それを考えながら作っています。

 

リアルとバーチャルに共通してあるもの。
ブドウの場合は、「良質なブドウ=良質な水、日光、土地、管理」だと思いますが、音楽の場合も全く同じで「良質な音楽=良質な水、日光、土地、管理」が必要です。

水=息、呼吸。vibeと言っても良いかもです。吸う事、出す事、両方が大事。
日光=精神。祈り。上から注がれるもの。
土地=養分。音楽的ボキャブラリーの豊富さ、解釈の柔軟さ。
管理=(演奏)技術

 

時々「バーチャルが広まってしまったら、リアルはいらなくなるんじゃないのか?」という疑問をもたれる方があります。要するに、演奏家がいらなくなってしまうのではないか、ということですが、それは「ワインが広まったらブドウがいらなくなるのでは?」という心配と同じ事です。ブドウは絶対に必要なのです。ただ必要とされるブドウが少し変わるかもしれません。

その新しい地に、新しいブドウとして育つ方が、次々と現れる事を願っています。

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Real = Grape = Live concert

Virtual = Wine = Sound system, like Rinshu

We found out after producing Music in Heaven concert series that healthy people with some free time can only come to the show, even though we were trying to deliver "hope to live" through best performance, venue, visual, sound... When we create sound for Rinshu, we think of how it is used (for home care...), and be careful so that the sound will be a serenity, and never stimulating. 

Just like to grow good grape, we need good water (=breath, vibe), good sunlight (=spirit, prayer, coming from above), good soil (=musical knowledge), good management (=techique) when we want to create good music.

 


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